日記提出を子どもに徹底する

1、約束と叱る予告
  大学ノートを横半分に裁断したものを子どもたちにわたす。
  表紙には、「見つめるノート」「子どもの名前」をシールではっておく。
  新学期初日のことである。
  子どもたちは、「見つめるノート!」と口々に言っている。「先生、日
 記みたいなもの?」 と気の早い子は聞いてくる。
  それには答えず、集中させて話す。

  これは「見つめるノート」と言います。
  みなさんに毎日書いてもらいます。
  テーマを決めるときもあるけど、基本的には何を書いてもいいです。
  かっこいい先生を見つめて書いてもいいし、友達のことを見つめたり、少年団のことでもいい、自分の心の中を見つめて書いてもいいのです。

 『ノートの表紙をめくりなさい。約束がいくつか書いてあります』
  テプラではった約束が書いてある。

 ・心を込めてていねいに書く。  ・毎日書く。
 ・日付と題名をつける。
 ・先生がくる前に提出する。

  続けて言う。

  先生は、このノートをとても大切に思っています。
  ひとつは、みんなに毎日努力する力をつけてもらいたいからです。1年に2 20日くらい学校にきます。毎日5行ずつ書き続けると、1年間で1100行も の文章を書くことになります。
  もうひとつは、皆のことを少しでも知りたいと思っているからです。とっても  大切なノートです。だから、そこに書いてある約束もとても大切です。だから、やぶったらしっかりと叱りますから覚悟して下さい

 「やぶったらしっかりと叱りますから覚悟して下さい」という言葉くらいで、徹底が
 できれば、教師という仕事は楽だ。
  この程度の言葉で徹底させられるのは85パーセントの子どもで、残りはまだ
 タカをくくっている。
  大事なのは、「ほんとに叱る事実」である。

2、ほんとに叱る事実
  次の日の朝、「おはよー!」と教室に入り、ノートの冊数を数える。
  4冊足りない。
  朝の会の「先生からの話」でいきなり切り出す。

  まだ、見つめるノートを出していない人、立ちなさい

 4人が立つ。
 『◎◎くん、なぜ出していないのですか?』
 「出すのを忘れました」
 『書いてはあるのですね?』「はい」
 『では、どうしますか?』「いま出していいですか」
 『いいですが、言うことはそれだけですか』「あっ、すみませんでした。今度は気
 をつけます」
 『良くできました。こういうときは、理由とわびと次からのこと、この3つは最低話す
 のです』
 最初から最後まで、いつもより少し強い口調で、また毅然とした態度で接する。
 さて、次の子どもが問題である。
 『なぜ、出していないのですか?』「済みません、書くのを忘れました。今日中に書
 いて出します。今度からは忘れません」
  100点満点の答えである。しかし、私はこう言う。
 『どんなに忘れっぽい人でも、初日くらいはもってくるもんです。先生は、このノート
 を大切に思っている、という話をしましたね。それを、いいかげんに聞いていたので
 すか』
 「いいえ」
 『では、忘れてきたのはどういうつもりですか?』
  うつむいたまま、目はうるんでくる。
 『明日から、きっときちんと出せますね。あなたらしくありません。明日のノートを楽し
 みにしています』
 「はい」
 『座りなさい』

  みなさんに言います。先生は、やって下さい、と言ったことはどんなことがあってもやってもらいます。 それを覚えておいてください。

 こう話した後に、にっこり笑って「それでは授業をしましょう」ときりっと切り替える。