子どもにお礼を言う技術

1 子どもにお礼を言う技術とは
 漆間浩一氏の書いた『1時間子ども熱中!社会科授業のコツ&アイディア40』
という本がある。その中に「子どもに感謝、感謝」という項がある。実は、「子ども
にお礼を言う技術」とは、漆間氏は書いていない。
 正確には次のように書いている。
「子どもたちがしてくれたことに大いに感謝したい。そのためには子どもたちやクラ
スの様子をしっかりと見よう」。そうすると「子どもたちは、いろいろなところで教師を
助けてくれる。もり立ててくれる」と漆間氏は書いている。
 つまり、子どもたちに感謝を伝えることが、子どもたちとの関係を友好なものにし、
授業運営を円滑にするという主張である。

2 お礼の言い方
「お礼を言う」ことが技術なのではない。
 子どもに何かしてもらった時、お礼を言うのは人間として当たり前のことである。
 そうではなくて、「お礼の言い方」に「技術」が必要であって、コツがあるのだ。  
漆間氏の実践からそのコツを抽出する。

@ 虫眼鏡で教室を見る。
A お礼に「名前」を入れる。
B 私メッセージとして伝える。
C お礼の言葉を貯金しておこう。
D 子どもの姿を映像で想像しよう。

 @。漆間氏は黒板のきれいさに気づききれいにした子どもにお礼を言っている。昨
日と違う今日を何とか見つけだせなければいけない。そのためには虫眼鏡で見るよう
に小さな変化に気づける教師でなければならない。
 更にコツはと訊かれたら、私は定点観測を薦める。子どもの下駄箱だけを一週間見
続ける。黒板の消し方なら、それだけを一週間見続ける。
 A。『サンキュー、小川君』。子どもを大切にする教師は子どもの名前をきちんと呼ぶ
教師である。
 B。「ほめる」のではない。「お礼を言う」のだ。「えらいなあ」ではなく「うれしいよ、あ
りがとう」だ。
 C。『いつかスカイラークにチョコレートパフェを食べに行こう』。漆間氏のお礼の言葉
だ。いつでも同じほめ言葉じゃいけない。普段からお礼の言葉を貯金箱に入れて貯め
ておこう。
 D。授業で使う資料を持ってきてくれた生徒に対して漆間氏はこう書いている。『持っ
てくることをしっかりと覚えて、ただでさえ重いカバンに本をわざわざ持ってきてくれる。
そんな姿が思い浮かべば感謝しないでいられようか』。想像力は優しさだ。

3 もう一歩つっこんで
 教師の話術については野口芳宏『授業の話術を鍛える』(明治図書)。「私メッセージ」
についてはトマス・ゴードン/著 奥沢良雄/[ほか]共訳『教師学 効果的な教師=生徒関係の確立』(小学館)を参照されたい。