杉原千畝の授業

 以前の実践内容に、史実上の誤りがありました。
 お詫びして、いかに修正プランを載せます。

1,1枚の写真から

 まずは、1枚の写真を提示する。
 私は、アウシュビッツ収容所の正門の写真を使った。
(早乙女勝元編『母と子で見る2 アウシュビッツ』(草の根出版会より
コピーしたものを使った)

 この写真を見て、気がついたこと、分かったこと、思ったことを書きなさい。

 発表させる。

 この写真、今から60年くらい前の写真なんです。どこの国だと思いますか。

 いきなり2,3名を指名する。

 実はポーランドなんです。

2,建物の中では何が?

 この門から一歩中にはいると中では何が行われていたでしょうか?

 全員起立させ、発表させる。
 同じ意見が出たら着席させる。
『実はこのようなことが行われていました』といって、累々と積み上げら
れた遺体の写真を提示。

 ここはアウシュビッツ収容所と言います。
 当時ドイツの指導者ヒトラーは、ドイツ人こそが優秀であるという考え方を発表して、他の民族を差別しました。
 特にひどかったのがユダヤ人に対する差別です。
 ユダヤ人であると言うだけで、逮捕され、収容所に入れられ、狭い部屋に閉じこめられ、やがて風呂に入れてやるとうそを言い、ガス室へと入れて、毒ガスで殺してしまいました。
 例えば、1941年には、ヒトラーはついに「すべてのユダヤ人を殺す」という計画を打ち出したりしています。
 そうして殺された人々は、600万人といわれています。

3,救った人がいた!

 そうした気の毒なユダヤ人を救った人がいました。
 どこの国の人だったでしょうか。
 ノートに書きなさい。

 全員起立させ、発表させる。
 同じ意見が出たら着席させる。
『もちろんいろいろな国の人がいます。しかし、その中に6千人ものユダ
 ヤ人を救った杉原千畝と言う日本人がいました。』
と話した後、杉原千畝氏の肖像を提示。

 さて、ヒトラーの差別政策に対してユダヤ人たちはどうしたでしょう。
 ユダヤ人はどうしたでしょう。

 すぐに、指名。
「ドイツから国外へ逃げようとした」ことを確認する。

4,押し寄せるユダヤ人
 当時のドイツ付近の地図を提示する。
 杉原氏が、勤務していたカウナスの場所を確認する。

 千畝が勤めていたカウナスの領事館にも、ユダヤ人が国外へ出国しようと毎日のように押し寄せてきました。
 その数は、増えるばかりです。
 杉原千畝は、本国日本に出国許可証を発行してもいいかどうか、打診しました。

『答はどうだったでしょう?』
 数名に指名。
『答は、NOでした。なぜだか分かる人はいますか?』
 数名に指名。
『この時、日本はドイツと同盟を結ぼうとしていました。ですから、ドイツに反抗
 するようなことはできなかったのです』

5,千畝はどうしたのか?

 千畝はどうしたと思いますか。

 数名に発表させる。

 千畝は、本国の外務省に逆らって、ユダヤ人たちに出国許可証を発行することにしたのです。
 このことによって、千畝にはどんな危険が及ぶでしょうか。

・外務省を首になる。 ・ドイツから命をねらわれる。
・家族の安全も確かでなくなる。
『そのため、千畝は、仕事場に絶対に家族を入れなかったそうです。千畝
は一ヶ月もの間、ほとんど寝ないで出国許可証を書き続けたそうです。』

6,領事館閉鎖に
『そのように、ユダヤ人に対して許可証を書き続けた千畝ですが、とうとう
 戦争が激しくなって領事館を閉鎖しなければならなくなりました。つまり、
 ユダヤ人たちに許可証を発行することができなくなりました。』

 1枚でも多く、許可証を発行したかった千畝がしたこととは何でしょうか。

『なんと、一事休養先のホテルの住所を領事館の前にはりだしました。そして、
 ホテルで許可証を発行することを書き添えたのです。ですから、千畝はホテ
 ルでも、ユダヤ人たちのために許可証を発行しました』

7,国外退去に
『しかし、さらにさらに戦争が激しくなって、とうとう千畝は国外へ出なければな
 らなくなりました』

 1枚でも多く、許可証を発行したかった千畝がしたこととは何でしょうか。

『なんと、出発する汽車の時刻をホテルにはりだして、駅で許可証を発行すると
 書き添えました。』

8,いよいよさいごのとき
『千畝は最後の最後まで、電車に乗り込んでも、窓から顔を出して許可証を
 出し続けました。ところが、とうとう汽車の出発を告げる鐘の音がホームに
 鳴り響きました。それまでサインをもらおうと必死だったユダヤ人たちは、静
 まりかえりました。千畝は「許してください、みなさん。私には、もうこれ以上
 書けません。みなさんの無事を祈っています」といいました。すると、ホーム
 のユダヤ人が「ありがとう、スギハラ」「バンザイ、ニッポン!」と叫んだそうで
 す』
「今日の感想を書きなさい」

【引用文献】
早乙女勝元編『母と子で見る2 アウシュビッツ』(草の根出版会)
杉原幸子『六千人の命のビザ』(大正出版)
杉原幸子・杉原弘樹『杉原千畝物語命のビザをありがとう』(金の星社)